早稲田大学建築史研究室 月報

早稲田大学建築史研究室の活動報告ブログです。

9月報 夏季調査

夏季休業も終わり、研究室にはいつも通りの賑わいが戻ってきました。

 

さて、本日は夏季調査のお話をしたいと思います。
小岩研究室では、全ての学生が一年に一度、いずれかの調査に参加します。
その大半が夏季休業期間を使って行われるため、まとめて夏季調査と呼ばれます。

この夏に行われた調査について、それぞれの参加者に報告を書いてもらいました。
写真と共にお送りします。

 


〈目黒区平塚幼稚園調査〉
8月7日~9日の3日間、目黒区にある平塚幼稚園の調査をしました。
毎日助手の方がおやつに差し入れてくださるアイスを楽しみにしながら、熱中症に注意して過ごしました。
幼稚園という子供が生活する空間は、全てのスケールが小さくて、可愛らしいサイズの机や椅子が印象的でした。
既存部分と改修部分の区別に気を付けて寸法の計測を行ったほか、脚立を設置し小屋裏の調査も行いました
調査最終日には園長先生に、園の一番北側にある棟を案内していただきました。昭和8年に建てられた福島の廃校になった小学校を、幼稚園に移築してきたそうです。
素敵な建築の中で過ごせる子どもたちを羨ましく思うとともに、いつまでもこの場所を残していってほしいと感じた調査となりました。
(文章協力:M2 林さん)

 


墨田区白髭神社調査〉
8月2~3日、10日の3日間、墨田区にある白髭神社の調査を行いました。
連日の猛暑の中で調査していたので、熱中症には特に気を付けました。
そのためか、調査の初めには近くに住んでいる助手がゼリー飲料など差し入れてくださりました。
本殿は一間社で、関東大震災の頃に建てられたものです。複雑な屋根形状であったため、カメラやドローンなどを用いて、3Dモデルを作成することも試みました。
拝殿は既存図面が事前に入手できていたため、計画時と竣工時にどのような違いがあるかなど調査しました。
後日、新型コロナウイルスの流行で中止されていた神社のお祭りが再開したため、一部のメンバーで見学しました。これからも地域に愛される神社が残り続けると良いなと感じる調査でした。
(文章協力:M1 芝江くん)

 

 


〈四国茶堂調査〉
茶堂の調査は8月24日から8月29日に行われました。これは昨年度の高知県高岡郡梼原町の茶堂調査の流れを汲むもので、今年度は愛媛県西予市城川町の茶堂群を対象に調査いたしました。
メンバーは4人全て男ということもあり、和気藹々、レンタカー2台を駆って城川町を縦横無尽に調査を行いました。山中で泥に塗れ、虫と戦い、獣道を掻き分けながら悪戦苦闘しつつも、その中で茶堂を発見した喜びや、地元住民との交流から、茶堂の魅力に迫れた6日間でした。
(文章協力:D1 尾高さん)

 

 

 

カンボジア アンコール遺跡調査〉
例年アンコールゼミによって、カンボジアのアンコール遺跡調査が行われています。今年度は8月3日から8月31日にて、バイヨンGPR調査及びバイヨン図面作成のための3Dモデルを用いた実測調査を実施しました。
GPR調査は昨年度に引き続き、早稲田大学文学部考古学研究室の田畑先生、学生の皆さんと生活を共にしながら、合同で実施しました。慣れない環境の中で複雑な機材を扱いながらの調査は簡単ではありませんが、経験豊富な考古研の方々の優しさとパッションのおかげで、みんなで和気藹々と楽しく調査することができました。
バイヨン実測調査は、東京大学生産技術研究所大石先生ご提供のバイヨン3Dモデルを用いて、小岩研究室のメンバーのみで取り組みました。3Dモデル上で作成した暫定的な図面から、現場確認と実測を繰り返して加筆修正を重ねていく作図手法は、研究室として初めての試みであり試行錯誤の連続でした。今後数年かけて完成を目指していくための基盤を造るという意味では、非常に責任重大であり有意義な調査となりました。

 

 

夏季調査を通じて、普段の研究から得た学びを自分のためだけでない実践の場に還元する、という貴重な経験ができたと思います。

また、各々の調査が終了後、自分が参加していないものの思い出話を聞くのも楽しかったです。

 

さらに、調査は行けば終わりなのではなく、それを図面に起こしたり報告書を書いたりと対外的な形にまとめ、記録として残していくものです。

調査後の作業も気を引き締めて取り組んでいきたいです。

 

(文責:M1 笠井)