早稲田大学建築史研究室 月報

早稲田大学建築史研究室の活動報告ブログです。

5月報

日中は汗ばむ陽気となりましたが、皆様いかがお過ごしですか。

今回の記事では5月のゼミや発表についてお伝えしていきたいと思います。

 

■卒業論文中間提出①

5月22日にはB4生の卒業論文中間提出①がありました。

B4生にとっては初めての公式提出であり、修士生とも相談をしながら提出に向けて研究室で作業する姿が見られました。

また、提出後のゼミでは小岩先生からのフィードバックもあり、6月の研究室旅行での発表に向けてブラッシュアップやプレゼンテーション作成を行っていきます。

レジュメの内容について相談をするB4と修士生

 

提出後のゼミでのフィードバック

 

 

■9月生修士論文中間発表②

5月28日には9月生の修論中間発表会①が行われました。

小岩研究室からは王さんと長濱さんが発表し、緊張感を持ちながらも先生方と質疑応答が行われました。

王さんの発表

 

長濱さんの発表

 

 

■調査練習説明会

6月に行われる新入生を対象とした調査練習に向けて、小岩研究室で行う調査の意義や概要について説明会が開催されました。

併せてCAD講習会も行われ、夏の調査への準備としてぜひ真摯に取り組んでほしいと思います。また、修士生にとっても研究室での調査の意義を改めて問い直す良い機会となり、B4生への指導に向けて意識が高まっています。

調査練習説明会

 

博士によるCAD講習会

 

 

■プレ文献ゼミ

ゼミ中の発表の様子

 

修士生が毎週行っているプレ文献ゼミ/文献ゼミでは、中世に発生し、近世に発達・体系化したとされる木割書(大工技術書)の読解を行っています。木割書は草書や行書で書かれたくずし字という書き方で記されており、読解には訓練が必要です。

通年での木割書分析を通じ、比較建築史の手法と木割術の基本的構造を理解し、建築の生産実態や技術継承に対する想像力を深めること、またその成果を共同研究に結実させることを全体の目的としています。

質疑応答で図示しながらの説明

 

本ゼミの特徴は、単なる知識の習得に留まらない、建物全体の印象と細部部材の間に存在する空間的/構造的/意味的な連関や制約を精緻に捉える「眼」を養う点にあります。こうした史料の解読には、史料に記録されたくずし字の読解のみならず、内容理解に必要な建築史的、技術史的な知見が求められます。そのため、まずは三ヶ月間の「プレ文献ゼミ」において、これらの基礎を徹底的に固める期間を設けています。

 

4月~6月前半に行われるプレ文献ゼミでは以下の3つを目的としています。

 

・一次史料の扱い方を「木割書」を主題に学ぶこと

・共同研究の在り方を模索することで6月以降に始まる本文献ゼミに繋げること。

・修士論文執筆に向けて自分の意見を論立てられるようにし、論文執筆の手法を身につけること。

4〜5月ではプレ文献ゼミ前半の『新編拾遺大工規矩尺集』「五間四方堂」の読解が終了し、後半の『匠明 門記集』「四脚門」の読解に入りました。ゼミを通して、修士課程としての研究力を底上げするよう日夜励んでおります。同期の間でも話し合いを通してより結束を深められているように思います。

プレ文献ゼミに向けた準備の様子




■おわりに

去る5月21日は二十四節気の「小満」にあたり、木々の葉が生い茂り日光を受けて養分を蓄える季節です。研究室活動においても今まさに各々が興味関心の枝葉を伸ばし、スキルや知識を蓄えている真っ最中だと感じます。

 

そんな日々のなかで最近ふと思うのが、メンバーの「朝型と夜型のライフスタイルの違い」です。コアタイムのない当研究室は、各自が予定を合わせてゼミを行ったり、図書室のように集中して資料を読み込んだりと、非常に自由度高く活用されています。

多くの人はお昼過ぎから夜にかけて在室し、休憩中の雑談から議論が飛び交うことも日常茶飯事です。一方で、夜遅くに来て朝方に帰る人もいれば、朝早くから来て作業をする人もおり、時間帯ごとに在室する人の属性が変わります。特に今の季節の早朝は空気がひんやりとして気持ちがよく、集中するには絶好の時間帯です。

 

このような多様なスタイルが共存する環境だからこそ、研究室生活に慣れてきた今の時期の新入生の方々には、単に周囲のペースに合わせるだけでなく、主体的に自分に合った研究室の使い方や作業環境を探り当てる力を身につけてほしいと期待しています。

 

普段は行かない時間帯にあえて足を運んでみることだけでも、いつもとは違うメンバーや新しい意見に出会えるはずです。そうした小さな試行錯誤を通じて、「自分なりの集中できる空間」と「他者からの予期せぬ刺激」をうまく両立させていくことこそが、これからの研究生活の土台になるのではないでしょうか。

 

寒暖差の激しい日々ですが体調には気を付けて精進して参ります。

また5月には今回取り上げた発表などの他にも活動が行われており、それらについてはまた次号でお伝えいたします。

 

文責:大澤

 

4月報

若草が萌えたち爽やかな風が吹く季節となってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

 初めまして、本年度の月報を担当いたします、修士1年の大澤です。拙文ではありますが、小岩研究室の日々の活動についてお伝えしていきたいと思います。1年間、どうぞよろしくお願いいたします。

 

さて、4月に入り小岩研究室は新たなメンバーを迎え、新体制が始動いたしました。

 

 

■建築史系研究室合同顔合わせ

4/6には中谷研究室と合同での顔合わせが行われ、各々自己紹介を行いました。今年は両研究室10名以上の新入生を迎え、例年以上の活気を見せています。

B4生による自己紹介

 

小岩先生からの挨拶

 

 

新入生歓迎会集合写真

 

新入生歓迎会も終始和やかな雰囲気で進行し、親睦を深めることができたように思います。

同期の「ヨコの繋がり」と先輩・後輩の「タテの繋がり」は、今後の研究生活においてかけがえのない財産となります。これからも積極的にコミュニケーションを図り、互いに研鑽できることを楽しみにしています。




■プレ文献ゼミ

修士生はプレ文献ゼミが始まり、木割書の読解に励んでおります。

M1は初めてくずし字を読むメンバーが多く、苦戦しつつも協力しながら読解を進めております。





■ゼミ始め

各ゼミも始動しました。卒論生はフィードバックを受けながら各々の興味をもとに研究計画を立てていきます。また、私たち修士生も卒論生からの相談を通して自己研鑽に努め、気持ちを新たに身を引き締めて研究に励んで参ります。

 

 

■プレ研究会

小岩研究室ではグループで研究を行う「研究会」を各研究会長中心に運営しております。今年度は新しい試みとして研究会体制の見直しなどを行うプレ研究会を開催し、各研究会長が研究計画を発表しました。卒論生からも新規に研究会を立ち上げる動きがみられ、活発な研究室活動に向けて期待が高まります。

各研究会の研究計画発表

 

ここまで年度初めの研究室の様子を紹介してきましたが、卒論生、修士生ともに日々研鑽を積んでおり、どのような研究が行われていくのか楽しみです。

前期は夏の調査や論文執筆に向けた準備期間となります。興味の幅を広げること、何が好きなのかを深堀りすることができる期間ですので、次なる飛躍のための力を存分に蓄えることを願っています。



最後になりますが、本ブログではこのような形で研究室の日々の様子をお伝えしてまいります。読者の皆様、今年度もどうぞよろしくお願いいたします。 

 

文責:大澤

 

3月報(卒業式)

木々が芽吹き、花がそよぎ歌う門出の季節となりました。

時に厳しく、時に友人のように日々を駆け抜けた博士生、修士2年生、学部4年生の皆さまの卒業および進学を心よりお祝い申し上げます。

■卒業式

■博士生+修士2年生

■学部4年生

■研究室一同

今年一年は様々なことがあり、研究室が少し変化し始めた一年でもありました。春には新しい学部4年生を迎え、ますます建築史系は盛り上がっていく予感を感じています。

一年間月報の執筆を担当したキョウキョウ・松野から次の担当に引き継ぎます。建築史学は積極的に社会と接続して思索をしなければならないものであり、研究室内外の皆様をお繋ぎする役が務まったとすればこの上ない喜びです。今後も建築史学が社会とともに発展することを期待しております。

 

文責:キョウキョウ、松野

2月報

気づけば学期後期も終盤となり、まもなく春休みを迎えます。
時間が経つのは本当に早く、この時期を乗り越えてきた皆さん、本当にお疲れさまでした。

今月は、主に次の二つの行事が行われました。

 

■修論最終発表+中間発表(2/5)

■ゼミ活動報告会(2/14)



■ 修論最終発表+中間発表(2/5)
修士論文の最終発表会と一部中間発表が行われました。
修士課程の学生それぞれが、自身の研究テーマについて、背景や問題意識、研究方法、そして成果をまとめて発表しました。

これまで積み重ねてきた努力が形となって表れ、発表を通して研究の深まりも感じられる時間となりました。先生たちからのコメントや質問も活発に交わされ、充実した議論が行われました。

■ ゼミ活動報告会(2/14)
 また、小岩研究室と中谷研究室の合同ゼミ活動報告会を開催しました。
各研究室の文献ゼミや各研究会の成果、今後の展望などについて報告しました。

互いの研究を知ることで新たな気づきも生まれ、研究室全体として良い刺激を受ける機会となりました。これまでの取り組みを振り返るとともに、次のステップを考える前向きな時間となりました。

 

『新編拾遺大工規矩尺集・中』の総合的研究-読解と木割書比較を通して-

 

アンコールゼミ

 

木割研究会

 

講義録研究会

 

デジタルアーカイブ研究会

 

劇場研究会

 

技術思想研究会

 

こうして2月は一区切りと新たなスタートを感じる月となりました。
春休みを前に少し心と体を休めつつ、また新学期に向けてそれぞれの研究を進めていければと思います。研究室一同、今後も引き続き頑張っていきます。

 

文責:キョウ、松野

1月報

 少し遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。寒暖差の激しい日々が続いていますが、皆様体にはお気をつけてお過ごしください。

■卒論配属説明会

 さて、1月の大きな出来事として、卒論配属説明会が行われました。1月22日の卒論配属説明会に向けて、次年度に新しく入ってくる卒論生の皆さんに研究室の活動や各ゼミ・研究会の研究内容、そして一年間の計画をより分かりやすく紹介できるよう、修士1年のメンバーで協力して研究室紹介の冊子を作成しました。

 

 説明会当日は、小岩研究室の発表の順番が来る直前まで、発表担当の学生たちが緊張しながらスライドを修正し、「建築史研究室の熱意をどうすればもっとうまく伝えられるか」を考えていました。

 その中で小岩先生からもお話があり、建築史とは何か、建築史の意義とは何かについてご紹介いただきました。皆さんにとっても何かしらの気づきやヒントになったのではないかと思います。

■歴史への試論

(1)歴史の価値

 私も個人的な思索として、小岩先生の「歴史はお金に似ている」という言葉について考えてみました。

 お金は、貯め込んで持っていること自体が、必ずしも豊かさの指標になるわけではありません。
その使い方や代謝の仕方にこそ、人格や豊かさが現れます。 お金は、それ自体に価値があるというよりも、他者との関係を結び、持続させ、更新していくために用いられる中で、価値を獲得していくものです。 常に使い方の状態に気を配り、関係のあり方を問い直すことが求められる点に、お金の本質があるように思います。人間が謙虚であり続け、相手を尊重するためにはお金の存在および使い方が重要なのです。

 このように考えてみると、「歴史もまたお金に似ている」という言葉の意味が、少しずつ見えてくるように感じられます。 ここで、お金という言葉を、歴史に置き換えてみましょう。

 歴史もまた、蓄積して知っていること自体が、豊かさの指標になるわけではありません。
その使い方や代謝の仕方にこそ、思想や態度、ひいては人間性が現れます。 歴史は、共同体の関係を持続させたり、更新させたりするために必要なものであり、それ自体が価値を持つというよりも、他者や社会とどのような関係を結ぶために用いられるかによって、価値が生じるのではないでしょうか。

(2)歴史が作るもの

 さらに私は、歴史はお金以上に、人間のより根源的な部分を形づくっているものだと感じています。 それは「信頼・関係」です。

 他者にはそれぞれの歴史があり、物の見方があり、態度があります。 その違いがあるからこそ対話が生まれ、関係が形成されていきます。 しかし、もし個人や共同体が、自らの過去や態度を修正し続けることを放棄すれば、 やがて信頼を失い、関係を結ぶことができなくなっていくでしょう。 これは、個人と個人の関係に限らず、地域と地域、国家と国家といった大きなスケールにおいても同様です。日々起きる摩擦や対立は相手と自分の歴史の問題なのです。

 歴史とは、ある共同体と別の共同体を結びつける媒介であり、 固定されることではなく、読み直され、修正され続けることにこそ価値があるのではないでしょうか。 歴史が価値を持つのは、それ自体が存在するからではなく、私たちが歴史との関係を問い続け、現在の態度として引き受け直すときなのだと思います。

(3)現代社会の問題と歴史

 現在の社会は、資本の衰退、人口減少、人材不足といった前提的な問題を抱え、 建築産業の縮小、コミュニティの縮小、社会インフラの維持といった課題が、顕在化し始めています。 明日もまた誰かと笑って過ごしていくためには、 これらを支える人間関係の持続が不可欠でしょう。

 しかし同時に、世代の分断、仕事関係の分断、学問と社会の分断、政治と国民の分断など、 私たちは多くの分断を抱えています。 私は、こうした共同体の分断の背景には、 「人を信頼できなくなっている」という問題があり、 その回復は、歴史にしか担えない部分があるのではないかと考えています。

 さまざまな問題が顕在化し、焦燥感に満ちた社会ではありますが、 届くのが遅くとも、歴史にしかできないことがあるのではないでしょうか。 私自身、それが何であるのかを、まだ明確に言葉にできているわけではありません。 もしかすると、的外れなことを言っているのかもしれません。

 それでもなお、だからこそ、こういった問いを個人が抱え込むのではなく、 研究や対話の中で共に考えていきたいと思っています。このように考えられるようになったのはひとえに同期たちがいたからです。 新たに卒業論文に取り組む学生の皆さんに、同じ物の見方を求めるわけではありません。ただ、互いに少しでも良いと思う見方を共有する中で私たちも熱を与え、新たな熱を受け取ることができれば、これ以上のことはないと感じます。

 

 最後に、たくさんのアンケート回答をいただいたこと、皆さんが興味のあるゼミや研究テーマを記入してくださっているのを見て、とても嬉しく思いました。研究室のメンバー一同、皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。



文責:松野、キョウ

12月報

師走となり、何かとご多忙のことと存じますが、いかがお過ごしでしょうか。

12月は文献ゼミ改訂や卒業制作中間ポスターセッション、ドクター発表会が執り行われました。

 

■文献ゼミ改訂

改訂発表者は本発表における指摘を踏まえ、より丁寧に分析を行い、木割書の意味解釈を深めました。年度末のまとめ発表に向けて、残された課題が多くありますが、以前にも増して議論・検討を重ねる所存でおります。

 

■卒業計画中間ポスターセッション

12月中旬には、卒業計画の中間提出にあたるポスターセッションが行われました。学部4年生は卒業論文提出直後から他研究室のチームメンバーと共に卒業計画の構想について話し合ってきました。ポスターセッション当日は、建築学科の各先生方や助手、TAの皆さまから多角的なアドバイスをいただくことが出来たようです。学部4年生は卒論期ほど頻繁に顔を合わせることは減ってしまいましたが、日々同期で励まし合いながら卒業計画の最終提出に向けて準備を進めています。

 

■ドクター発表会

12月20日には、建築史研究室ドクター発表会が行われました。小岩研究室からは、ネシベキナタス、尾高真輝、⻩胤嘉、金雄杰、徐麗婷、『木割の研究』出版会、ならびに小岩准教授が発表を行いました。いずれの発表も非常に興味深く、中川先生・中谷先生・小岩先生からも貴重なご意見をいただきました。今後のさらなる研究の深化と、より優れた成果の発表が期待されます。

 

■忘年会

そして一年間の締めくくりとして、12月23日に研究室で忘年会を開催しました。歓声と笑い声の絶えない雰囲気の中で、今年の楽しかった出来事や印象に残った経験を共有し合い、あわせて来年に向けた抱負や目標についても語り合いました。

 

寒さが増してまいりましたが、皆様どうぞご自愛のうえ、良い年末年始をお迎えください。来年も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。皆さまのご健康とご多幸を心よりお祈りするとともに、研究・勉強がより一層充実した実り多い一年となりますよう願っております。

 

文責:成ヶ澤、キョウ、松野

卒業論文感想報③

 前回に引き続き、今回は日本近現代建築史ゼミと西洋・西アジアゼミに所属していたお三方の感想をご紹介いたします。

 

<日本近現代建築史ゼミ>

 

島田恵佑さん

 

 卒業論文は、決して一人だけで書き上げられるものではありません。小岩先生をはじめ、研究室の先輩方から多くの指導や励ましを受けながら、私は最後まで取り組むことができました。支えてくださった皆さんには、心から感謝しています。

 私の卒業論文では、「近代建築の起源は、19世紀前半のフランス国立理工科学校における建築教育にある可能性が高い。しかし、その全体像を明らかにする史料は少なく、初代パリ北駅の事例だけでは、まだ分からないことも多い」という結論に至りました。つまり、研究を進めた結果、「今の段階では、ここまでしか分からない」ということが分かったのです。

 研究では、必ずしも明確な答えが得られるとは限りません。しかし、自分なりに考え、調べ、限界にたどり着く経験そのものが、とても大切な学びになります。暗い森を抜けた先で、広い海を初めて目にするような感覚。私にとって、卒業論文はそんな体験でした。

 本当は、その先の地平線からが研究の出発点なのかもしれません。ですが、そこまで到達できただけでも、私にとっては十分に貴重な経験でした。ここまで導いてくださったことこそが、小岩研究室で学ぶことの大きな魅力だったと感じています。

 私は来年度から社会人になりますが、この研究室で過ごした時間は、これからの人生を支える大切な財産になると思います。卒業まで残り少ないですが、この研究室で、自分なりの問いに向き合い、じっくり考える時間を、これからも大切にしていきたいです。

 

田原穂花さん

 

 はじめに、卒業論文執筆にあたり、支えてくださった先生方、先輩方に深く感謝申し上げます。私は居住空間を持つ擬洋風建築を対象に、細部意匠に見られる引用の姿勢について研究を行いました。擬洋風が持つ意匠の展開に時に翻弄されることもありましたが、研究を通して自分のなかの観察軸を深めることができたと感じております。振り返れば決して容易な道のりではありませんでしたが、学ぶほどに自分の世界が広がっていく感覚がありました。それは自分という枠を離れ、見知らぬ土地を歩くような、そんな旅の楽しさがありました。各地の擬洋風建築に触れたこともこの感覚をより豊かにしてくれたように思います。

 こうして研究を進めることができたのは、支えてくださった方々のおかげです。改めて、熱意あるご助言と温かいお力添えをくださった先生方、先輩方へ心より御礼申し上げます。これまでの経験を生かし、修士課程でも全力で励みたいと思います。



<西洋・西アジアゼミ>

 

成ヶ澤笑さん

 

 まず初めに、卒業論文執筆にあたり、ご指導いただいた先生方ならびに研究室の先輩方に深く感謝申し上げます。また、同期の皆と最後まで励まし合いながら取り組めたことは、とても心に残る時間となりました。

 小岩先生と初めて面談をした日、「スウェーデンに関連した研究で卒論を書いてみたら?」と提案していただいたことを、今でも鮮明に覚えています。学年を一つ下げてでもスウェーデンで学んだことは、建築学生としての選択肢を大きく広げてくれるきっかけになりました。私は卒業論文の対象としてストックホルム市庁舎を選び、9月には現地での資料収集も行いました。大好きなスウェーデンを研究したいという気持ちばかりが先走ってしまい、「建築学の論文としてどうまとめるのか」という視点がずっと抜け落ちていました。夏以降はその点について大いに悩みましたが、先生方や先輩方に多くの助言をいただき、なんとか論文という形にまとめ上げることができました。本当にありがとうございました。

 学部生のうちに留学に行くことは、建築学科ではまだ一般的ではないかもしれませんが、私の経験と卒論までのプロセスが、誰かにとって一つの前例になれていたら嬉しく思います。

 来年からは社会人として、新しい環境でも頑張っていきます。短い間でしたが、研究室の皆様には大変お世話になりました。ありがとうございました。



 日本近現代建築史ゼミは現代社会とのつながりを強く意識し、個人の考え方や社会思想に強く着目する傾向が見られます。今年度は擬洋風建築や近代建築教育に着目する研究を通してゼミ全体としても日本の枠組みを超えて広く議論する姿勢が見られました。加えて近代建築史を語るにあたり、これまでは西洋近代建築史が多く日本の近現代建築史を語る主軸になっていたように思いますが、研究室内のゼミ内外での議論も加わって近世以前の日本建築史との接続を意識することの重要性が多く議論されました。

 

 西洋・西アジアゼミは卒論生は一人でしたが、諸先輩方の密度の高い指導の甲斐あって非常に議論の深まる場になっていたと感じます。今年度の近現代建築史ゼミが西洋との関連を強く意識していたことや扱っている時代性が近いことからも、ゼミを超えて学生同士が互いに発想として触発しあえる環境になっていたと思います。

 

 今後もお三方それぞれの人生において、横断的に議論した時間が良い経験と思い出になることを願っています。



文責:島田、田原、成ヶ澤、松野