前回に引き続き、今回は日本近現代建築史ゼミと西洋・西アジアゼミに所属していたお三方の感想をご紹介いたします。
<日本近現代建築史ゼミ>
島田恵佑さん
卒業論文は、決して一人だけで書き上げられるものではありません。小岩先生をはじめ、研究室の先輩方から多くの指導や励ましを受けながら、私は最後まで取り組むことができました。支えてくださった皆さんには、心から感謝しています。
私の卒業論文では、「近代建築の起源は、19世紀前半のフランス国立理工科学校における建築教育にある可能性が高い。しかし、その全体像を明らかにする史料は少なく、初代パリ北駅の事例だけでは、まだ分からないことも多い」という結論に至りました。つまり、研究を進めた結果、「今の段階では、ここまでしか分からない」ということが分かったのです。
研究では、必ずしも明確な答えが得られるとは限りません。しかし、自分なりに考え、調べ、限界にたどり着く経験そのものが、とても大切な学びになります。暗い森を抜けた先で、広い海を初めて目にするような感覚。私にとって、卒業論文はそんな体験でした。
本当は、その先の地平線からが研究の出発点なのかもしれません。ですが、そこまで到達できただけでも、私にとっては十分に貴重な経験でした。ここまで導いてくださったことこそが、小岩研究室で学ぶことの大きな魅力だったと感じています。
私は来年度から社会人になりますが、この研究室で過ごした時間は、これからの人生を支える大切な財産になると思います。卒業まで残り少ないですが、この研究室で、自分なりの問いに向き合い、じっくり考える時間を、これからも大切にしていきたいです。
田原穂花さん
はじめに、卒業論文執筆にあたり、支えてくださった先生方、先輩方に深く感謝申し上げます。私は居住空間を持つ擬洋風建築を対象に、細部意匠に見られる引用の姿勢について研究を行いました。擬洋風が持つ意匠の展開に時に翻弄されることもありましたが、研究を通して自分のなかの観察軸を深めることができたと感じております。振り返れば決して容易な道のりではありませんでしたが、学ぶほどに自分の世界が広がっていく感覚がありました。それは自分という枠を離れ、見知らぬ土地を歩くような、そんな旅の楽しさがありました。各地の擬洋風建築に触れたこともこの感覚をより豊かにしてくれたように思います。
こうして研究を進めることができたのは、支えてくださった方々のおかげです。改めて、熱意あるご助言と温かいお力添えをくださった先生方、先輩方へ心より御礼申し上げます。これまでの経験を生かし、修士課程でも全力で励みたいと思います。
<西洋・西アジアゼミ>
成ヶ澤笑さん
まず初めに、卒業論文執筆にあたり、ご指導いただいた先生方ならびに研究室の先輩方に深く感謝申し上げます。また、同期の皆と最後まで励まし合いながら取り組めたことは、とても心に残る時間となりました。
小岩先生と初めて面談をした日、「スウェーデンに関連した研究で卒論を書いてみたら?」と提案していただいたことを、今でも鮮明に覚えています。学年を一つ下げてでもスウェーデンで学んだことは、建築学生としての選択肢を大きく広げてくれるきっかけになりました。私は卒業論文の対象としてストックホルム市庁舎を選び、9月には現地での資料収集も行いました。大好きなスウェーデンを研究したいという気持ちばかりが先走ってしまい、「建築学の論文としてどうまとめるのか」という視点がずっと抜け落ちていました。夏以降はその点について大いに悩みましたが、先生方や先輩方に多くの助言をいただき、なんとか論文という形にまとめ上げることができました。本当にありがとうございました。
学部生のうちに留学に行くことは、建築学科ではまだ一般的ではないかもしれませんが、私の経験と卒論までのプロセスが、誰かにとって一つの前例になれていたら嬉しく思います。
来年からは社会人として、新しい環境でも頑張っていきます。短い間でしたが、研究室の皆様には大変お世話になりました。ありがとうございました。
日本近現代建築史ゼミは現代社会とのつながりを強く意識し、個人の考え方や社会思想に強く着目する傾向が見られます。今年度は擬洋風建築や近代建築教育に着目する研究を通してゼミ全体としても日本の枠組みを超えて広く議論する姿勢が見られました。加えて近代建築史を語るにあたり、これまでは西洋近代建築史が多く日本の近現代建築史を語る主軸になっていたように思いますが、研究室内のゼミ内外での議論も加わって近世以前の日本建築史との接続を意識することの重要性が多く議論されました。
西洋・西アジアゼミは卒論生は一人でしたが、諸先輩方の密度の高い指導の甲斐あって非常に議論の深まる場になっていたと感じます。今年度の近現代建築史ゼミが西洋との関連を強く意識していたことや扱っている時代性が近いことからも、ゼミを超えて学生同士が互いに発想として触発しあえる環境になっていたと思います。
今後もお三方それぞれの人生において、横断的に議論した時間が良い経験と思い出になることを願っています。
文責:島田、田原、成ヶ澤、松野